除草剤VS雑草

「もう本当に邪魔! どうして雑草って生えてくるんだろう……。

 生えてこなきゃ駆除されることもないのに。虫だって分かるよそんなこと。」


人間の女はそう言いながら雑草に除草剤を撒き、その場から立ち去った。

撒かれた除草剤は早速地面に浸み込み、使命である雑草の駆除を執り行おうとした。


「ふう、全く自分勝手なお方ですこと。雑草には意志はないのです。

 だからどこにでも生えるのです。アスファルトの隙間にも。」


除草剤は女のような人間はあまり好きではなかった。

草に対し余分に除草剤をかけるからだ。

だから、予想もしないことが起こり得る。


「来たか、除草剤よ。もう我らはお前には屈せぬ。耐性ができたからだ。」


見知らぬ声が聞こえた。どうやら雑草の声のようだ。


「ほう、雑草も喋るんですね。いつもはすぐ枯れてしまうので、知りませんでした。」


「ふっ、何も知らぬ除草剤風情が。無知は悪だ。もともと雑草は喋るものなのだ。

 蟻だって喋る。自然は全て言葉を発するのだ。人間にはそれが分からないようだがね。所詮お前たちは人工物。我らのことなど分かりはしない。」


雑草が除草剤を嘲笑った。


「自然でなくとも、言葉を話しますよ。ちょうど、この私のように。」

「揚げ足を取るな、人工物のくせに。」

「自然は淘汰されるべきなのです、特に貴方のような雑草は。」

「そうなればお前も消えてなくなる、それを忘れてはおるまいな?」


突然の足音に、雑草も除草剤も音の方を見上げた。

その正体は先ほどの女の母親だった。

ブツブツ言いながら雑草を引っこ抜く。

雑草はマンドラゴラだったので悲鳴を上げ、世界は破滅した。