サルベージ怪文:アースガルド編

トールが車に乗り中々に荒い運転を繰り返していた頃、オーディンはコンビニで買ったおでんがあまりに熱かったので必死に冷ましていた。

このように現代の文化に染まりきったアース神族を見て、ロキは

「これではラグナロクの前に全滅してしまうんじゃないか」

と思っていたが、そのくせ自分もキャンプに行って火を見ながら肉を食べていた。

だが、ヘイムダルは違った。

彼は、他の神々がミッドガルドでパリピしている時でも、いつも見張り番をしていた。いつ巨人どもが襲い掛かってくるか分からない。そのため、常に見張っていないといけなかったのだ。

オーディンがようやくおでんを食べられるぐらいに冷ませた頃、トールは路上を走る自転車と危うく接触事故を起こしそうになり、自転車の男にブーイングをされ堪忍袋の緒が切れかけたが、自分の車の名誉のためにここは耐えた。

なんだか無性にお腹が空いてきたので、近くのショッピングモールに行くことにした。

平日の昼間のくせに何だか人が多い。どうやらイベントがあるようだ。

人ごみをかき分けて見ると、そこにはトールには無縁のイケてる服を着たフレイがいた。

彼はどうやらアイドルの類にでもなったらしい。

「何故ここに」

トールは思わず口走り、その後あっ、と口をふさいだ。

眉目秀麗のユングヴィ・フレイ・イン・フロディは、トールの方を少し見て軽く微笑んだが、すぐ別の方向を向いた。

これ以上ここにいても意味がないと感じたので、トールは本来の目的であるフードコートに行った。ラーメン屋とインド料理屋とサンドイッチ屋、その他いろいろな店がある。

トールはがっつり食べたいのでラーメンを食べた。その後暇つぶしにウィンドウショッピングをしていた。

家に帰ったときすでに日は暮れていて、妻シヴが

「ずいぶん遅い帰りですのね。料理はもう冷めましたわ」

と言う。再加熱して食べた。