水底の天国
川底の天国を掬い上げて、サバーカは私に
「俺たちはここに行けるのかな」と不安そうに笑った。
サバーカは天国の母に会う為、何としてでも天国に行かなければならない、とかつて私に語った。
私は死後の世界など信じていなかったが、もしそんなものがあるならサバーカと一緒に天国へ行きたいので、彼と共に善行を積んだ。
今日、私たちは川にゴミ拾いに来た。
勿論天国へ行く為だ。
川は思っていた以上にゴミが多く、早朝に来たのに拾い終わる頃には昼下がりになっていた。
私が木陰で休憩していると、川で遊んでいたサバーカが私の元に駆け寄って来た。
「コーシカ! ちょっと来てくれよ」
と言うので行ってみたら、サバーカが川の底に沈んでいた天国を掬い上げ、あの言葉を言った。
私は曖昧に返す他なかった。
これは本当の天国なのだろうか。
私は前述した通り死後の世界を信じていなかった。
なのでそれが本物か、よく出来た模型じゃないのか、と注意深く観察した。
すると、大勢の人がいた。
大勢の人が歩いたり、談笑したりしている。
私たちの存在には気づいていないようだ。
「あっ! 母さんがいる」
サバーカが一人の女性を指差した。
それはかつてサバーカに見せてもらった写真に写っていた、彼の母親だった。
私はこれが本物の天国である事を信じざるを得なかった。