廃墟に眠る地縛霊
「やっと着いたわね。」
山瀬夕陽は廃墟へ朝野紀月と遊びに来ていた。
「あのさ、ここで何するの?」朝野紀月が訊く。
「あら、聞いてなかったの?肝試しよ。」
肝試し。その言葉を聞いた瞬間朝野紀月は震え上がった。
「ひっ……廃墟だよ、幽霊が出るよー…。」
「だから来たんじゃない。もしかしたら人がいたりして。」
「それはそれで怖い…。」
「それはそうと、突撃よ!ほらついてきて!」
山瀬夕陽は朝野紀月の手を引っ張り走って行った。
廃墟の光源は外から射す日光のみだった。
「暗いわね」
「幽霊が出てきそうだよ…帰ろうよ、帰れば後で霊障に悩まされる心配もなくなるから。」
「隅々まで見て回ってから帰るわ。さあ行きましょ。」
怯える朝野紀月を連れて、部屋の隅々まで調べ回った山瀬夕陽は、ある物を見つけた。
「写真だわ。」
「心霊写真…?」そばにいた朝野紀月が震え上がった。
「違うわ、ただの写真。白黒写真だから、昔の写真かしら。」
写真には笑っている家族が写っている。
「この家に昔住んでいた家族かしら、幸せそうね。今はどこにいるのかしら。」
「お前の後ろだよ!」
突然背後から声が聞こえ、振り返った。
そこには憎しみに歪んだ顔をした男性がいた。
その男性は写真に写っていた父親だった。
「う、うわー!ゆ、幽霊!本当にいたんだ!」
「あなたは、この写真の父親ね。何があったの?」
そう言うと、幽霊はさらに顔を歪ませ、こう叫んだ。
「あの女!あの女が浮気してやがったんだ!!そしてあの女は俺を包丁で刺しやがった!そのままのうのうと生きてやがる、許せねえ!」
「あの女って、まさかこの写真の母親?」
「そうだ!今すぐあの女を殺しに行きたいところだが、地縛霊だから殺しに行けねえんだ!」
「殺されたのはいつ?」
「1895年5月20日午後8時19分!あの時のことは忘れはしねえ」
「奥さんは当時何歳だった?」
「27だ。一体お前何が聞きたい?」
「1895年って…今は2015年だから、えーと…120年前のことだよ!」
朝野紀月は暗算をし、この幽霊は120年も幽霊だったのか、と考えると気が遠くなった。
「そう、120年前。あなたを殺したその女性は、今はもう生きていないでしょう。」
「そ、そんな…。何のために今まで恨み続けたんだ……」
幽霊は絶望のまま成仏した。
「成仏したわ。帰りましょう。」
「いくら何でもこんな成仏のさせ方はないよ…」
家に帰って、その事件のことを調べると、あの男性を殺した女性は刑務所で獄中死していた。
まあ、そんなものか。と思い、山瀬夕陽は別のことを始めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
-後書き-
1895年5月20日は月曜日です。
何て言うか、変な小説ですね。
この小説も長いので分割しました。
微妙な長さなので統合しました。タイトルも別にしました。
この地縛霊は全く眠ってない上に、120年も存在し続けるおかしい霊です。