空魔界王の呪い
ちわっす。我は黒曜カナフ。
語尾にでちゅをつけてしまう呪いをかけられた男子高校生でちゅ。
何故そうなったかというと……。
昨日、我は普段通らない道を帰っていたのでちゅ。
すると、クラスメイトのハラル空河が壁に穴を開けて中に入って行ったのでちゅ。
我は不思議に思い彼の後をついて行ったのでちゅ。
しばらく歩いていると突然ハラルが振り向き、
「貴様、私の後ろをついて来るとは、いい度胸じゃあないか。」
と睨みつけてきたので我も負けじと睨み返したのでちゅ。
「ははっ、貴様は命が惜しくないようだな。ならば言ってやる。」
ハラルはそこで傲慢を体現したような表情を見せまちた。
「私は空魔界の魔王、シャイト・ターン。ハラル空河は世を忍ぶ仮の姿だ!」
我は空魔界が何か理解できず、それは何かと彼に聞いたのでちゅ。
「……まさか貴様、私の正体を知らずに私についてきたのか……? なんて事だ!何も知らぬ奴に正体を教えてしまった!」
面倒くさい事になったので帰って忘れようとしたその時、
「私の正体を知ったからには生かしておけん!」
と魔王シャイトが我の首を掴みまちた。
「だが殺せば厄介な事になる。私の事を話せぬよう呪いをかけてやる。」
彼がそう言ったあと、首を絞められ、気がつくと我は自宅のベッドにいたのでちゅ。
そしてこの有様でちゅ。
何故記憶を消さずに語尾をでちゅにしたのかは謎でちゅが、今日は平日なので学校に行きまちゅ。
支度を終えリビングに行くと母さんがいて、何故か安堵の表情を顔に浮かべてていまちゅ。
「カナフ、もう大丈夫なの?あなた2日も眠っていたのよ。」
まさか。こういうのは普通一晩で済むはずでちゅ。
「母さん、誰がここに我を運んできたんでちゅか?」
「ハラル空河くんよ。倒れてるのを見つけて、運んできてくれたそうよ。ところでどうしたのそのでちゅって。」
「倒れる前色々あったみたいでちゅ。」
とりあえず適当に返して家を出まちた。
ハラルめ、嘘をついてやがりまちゅ。まあ学校でハラルに問い詰めればいいでちゅ。にしても2日って、内申に響きそうでちゅ。揺れるバスの中でそんなことを考えながら我はまどろみ、眠りに落ちてしまいまちた。
シャイトが我を嘲笑っている。
「男子高校生のくせにでちゅなんて気持ち悪くはないか!」
「お前がそんな呪いをかけたのが原因でちゅ!今すぐ呪いを解くでちゅ!ふざけるなシャッ――!」
シャイトと言おうとした瞬間、我の首が絞まりまちた。
「苦しかろう! 私の名前を呼ぼうとすると首が絞まるのだ! はーっはっはっはっ!」
「何がおかしい! 名前を呼べぬならあだ名をつけるまででちゅ!」
「無駄だ。私のことを指しているのであれば、例え煮干しだろうと首が絞まる! 仮の姿を指すのなら話は別だが。」
「煮干しって、魔王のくせに随分と庶民的なんでちゅねぇ……。」
我が挑発すると、シャイトの顔が一瞬屈辱と軽蔑が混ざり合った表情に変わったんでちゅが、すぐに余裕のある顔に戻りまちた。
「……ふん。そんなことを言っていられるのも今のうちだ。せいぜい足掻くがいい。」
そう言ってシャイトは姿を消し、我は目を覚ましまちた。
タイミングよく、バスは学校へ到着していたので、我はバスを降りて校舎に入りまちた。